適切な気密・断熱性の家ってどんな家?安心できる性能とは
家の性能が、家族の健康を左右します。実際に、高性能な家に住むことによって、疾病率が大きく変わるという統計があります。コスト面だけを重視し、安い家を買い、病気を患ってしまっては元も子もありません。家は人生で一番大きな買い物なので、性能にも気を配って選んだ方がよいでしょう。本記事では家の性能面で重視する点を解説します。
気密性・断熱性が必要な理由とは
気密や断熱という言葉をご存知でしょうか。デザインやコスト以上に大切な家の性能にこだわることで後々のメンテナンス費が変わるだけでなく、医療費にも影響するため、ぜひ参考にしてください。
温度差のない家を作ろう
性能の高い家とは、断熱性と気密性に優れている家のことを指します。日本と諸外国の住宅平均寿命を比較するとイギリス約77年、アメリカ約55年、そして日本は約30年といわれています。湿気が多い日本の家は腐りやすく、その家の腐食を引き起こしているのが、壁の中で生まれる結露です。結露は家の断熱性能が低く、家の中と外で温度差が発生する事が原因で発生します。
日本では、年間約1万7000もの人がヒートショックで命を落としています。ヒートショックとは、家の中の急激な温度差により血圧が大きく変動することで、失神や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こし、体へ悪影響を及ぼすことです。これは交通事故で亡くなる人(年間約3000人)の5倍以上になります。ヒートショックを防ぐには断熱性能を高くした家づくりをして、住居内の温度差を小さくすることが必須です。
また、断熱が不充分な家ほど結露が発生しやすく、カビが生える原因を作ります。カビによってダニが繁殖することで、いわゆるハウスダストになり、気管支喘息やアトピー性皮膚炎など、アレルギー疾患を引き起こすのです。冬は浴槽での溺死、転倒、転落リスクが高くなってきます。
さらに寒さは、のどの痛み、喘息、せき、アトピー、手足の冷え、アレルギー性鼻炎、肌や目のかゆみ、睡眠不足の原因にもつながります。性能について考えるうえで、もっとも大切なのは温熱環境、すなわち「暖かさ」です。暖かな家は、冬にも快適に過ごせるだけでなく、家族の命と健康も守ってくれるのです。
住宅の価値
住宅の価値は数値によって一目で見分けられます。
Q値(熱損失係数)から断熱性能が分かります。Q値が小さいほど、住宅や保温性能が高く熱が逃げにくいので断熱性が高いことを示します。逆に断熱性の低い家は、エネルギー効率が悪く、光熱費がかさむ可能性が多くあります。
もう1つの数値がUA値(外皮平均熱還流率)です。これも数値が小さいほど、断熱性が高いことを表します。最近はUA値が主流となりつつあります。数値通りの断熱性能が発揮できるかは気密性にかかっています。気密性の高い住宅は、隙間からの熱損失がないため保温性に優れ、冷暖房の効率がいい住宅になります。
どのくらいの隙間までなら断熱性が損なわれずに済むのかの基準となるのがC値(隙間相当面積)です。C値は気密性を表す数値です。値が小さいほど気密性が高いことを意味します。
適切なUA値・C値とは
日本の気候は地域によって大きな差があるため、省エネの基準やUA値は8地域ごとにそれぞれ設定されています。寒い地域に建てる家ほど、厳しい基準が課せられています。長野(4地域)の省エネ基準では、UA値0.75とされていますが、ZEH基準となると同UA値0.6ときびしくなっています。
ZEH基準とは、2015年12月に新しい目安として経産省が打ち出したネットゼロエネルギーハウス基準を指します。従来よりもさらに高い断熱性能が求められています。省エネ基準は義務で、ZEH基準は達成目安という違いはありますが、0.6をクリアした家を建てる住宅メーカーを選ぶことが家づくりでは重要になってきます。
多くの専門家はC値1.0以下が必須だと考えています。C値が1.0なら、その住宅の隙間を全部集めるとハガキ1枚分の面積になります。ちなみに住宅先進国のドイツで採用されているC値は、0.2~0.3です。
高気密・高断熱の頑丈な家を建てよう!
断熱と気密は相互に密接に関係しています。断熱性能だけをいくら高めたところで、気密性能が低かったら、断熱の効果は充分に発揮されず、冬は寒く夏は暑くなります。
加えて、結露による断熱性能の更なる低下、そして家の寿命を縮めることにつながります。また、嫌な匂いが室内にこもったりもします。断熱と気密は相互作用があるので、ともに優れていないと相乗的な効果は望めず、住宅の中に快適な空間が生まれません。
だからこそ、高気密・高断熱に関しては妥協することなくこだわってほしいのです。そのため、快適で健康的な生活ができる、そして長持ちする家になります。高気密・高断熱に初期投資すれば、家族の健康と快適な住まいを手に入れられるのです。
まとめ
暖かい家に住むと眠りの質がよくなり、頭痛や肩こりも改善します。真冬に家の中で白い息が見える人、リビングにいてもダウンジャケットが手放せないという人は、断熱・機密性能の高い暖かい家づくりを最優先し、見直してみてはいかがでしょうか。この記事を参考に、デザインやコストだけでなく性能にも投資し、家族の健康と命を守りましょう。